運営指導公開日

BCP未策定減算は1%|感染症と災害の両方がないと減算になる

業務継続計画は作ってある。感染症が広がったときに誰が出勤して、どこまで支援を続けるかも決めた。それでも減算の対象になることがあります。災害のほうの計画が別に要るからです。

この記事では、BCP未策定減算の減算率が通所系では1%であること、何がそろえば減算を免れるのか、そして運営指導で発見された時点ではなく未策定だった月まで遡って適用される仕組みを、条文とQ&Aの原文とあわせて整理します。

BCP未策定減算の減算率は1%。感染症用と災害用がそろって初めて免れる

業務継続計画未策定減算(BCP未策定減算)の減算率は、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援では所定単位数の1%減です。3%ではありません。3%は障害児入所支援の率で、通所系の解説記事にもそのまま書かれていることがあります。

注意

3%と書かれた解説は、入所の率と取り違えている

障害児入所支援 … 3%減

児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援 … 1%減

自事業所の率を調べるときは、入所向けの記述が混ざっていないかを先に確認してください。金額の見込みが3倍ずれます。

そして減算になるかどうかを分けるのは、計画の出来ではなく、感染症用と災害用が両方あるかです。共通Q&A VOL.1 問14は、感染症若しくは災害のいずれか又は両方が未策定の場合に減算の対象となる、と書いています。感染症編だけ立派に整っていても、災害編が無ければ対象。逆もまた同じ。

感染症の発生時に備えた業務継続計画と非常災害の発生時に備えた業務継続計画を左右に並べ、両方そろっている場合だけ減算なし、どちらか一方でも欠ければ所定単位数の1%減になることを組み合わせ表で示している。下段では指定通所基準 第38条の2 の6項目を、運営基準上の義務であるか、BCP未策定減算の算定要件であるかに分けて整理している
感染症編と災害編が両方そろって初めて減算を免れます。下の表の第2項・第3項は義務ですが、減算の算定要件ではありません。

1%という数字だけを見ると小さく感じます。ただし1%減の減算は他にもあり、虐待防止措置未実施減算と身体拘束廃止未実施減算が同じ1%で並んでいます。複数に該当すればそれぞれの減算割合を乗じることになるため、単独で見ないほうが実態に近い。減算全体の並びは減算一覧と減算率の記事にまとめています。

第38条の2が求める6つと、そのうち減算の算定要件になる3つ

根拠は指定通所基準 第38条の2 です。放課後等デイサービスは第71条、保育所等訪問支援は第79条で準用されるため、求められる中身に差はありません。条文は3項に分かれていて、第1項が策定と必要な措置、第2項が周知と研修・訓練、第3項が定期的な見直しです。

ここで実務上いちばん誤解されているのが、第2項と第3項は運営基準上の義務だが、減算の算定要件ではないという点。共通Q&A VOL.1 問14が明記しています。研修をやり忘れた年があるから減算だ、と早合点して自主返還の相談に行く必要はありません。義務であることは変わらないので、放置はできませんが。

第38条の2 が求めることと、減算の算定要件の線引き

指定通所基準 第38条の2 が求めること運営基準上の義務BCP未策定減算の算定要件
第1項 感染症の発生時に備えた業務継続計画の策定義務算定要件(未策定なら減算)
第1項 非常災害の発生時に備えた業務継続計画の策定義務算定要件(未策定なら減算)
第1項 業務継続計画に従い必要な措置を講じること義務算定要件(講じていなければ減算)
第2項 従業者への業務継続計画の周知義務算定要件ではない
第2項 必要な研修及び訓練の定期的な実施義務算定要件ではない
第3項 定期的な業務継続計画の見直し義務算定要件ではない

研修と訓練の頻度は、解釈通知上どちらも年1回以上。加えて新規採用時の研修が望ましいとされています。訓練は机上と実地を適切に組み合わせること。減算の直接の要件ではないぶん後回しにされやすいところですが、運営指導では第2項の履行として別途問われます。

BCP未策定減算の適用

項目内容
減算率所定単位数の1%減(99/100)。障害児入所支援は3%
所定単位数の意味各種加算を足す前の基本報酬
適用する単位利用者全員
効く期間事実が生じた月の翌月から、解消した月まで
適用の起点運営指導で発見された時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点まで遡及
対象サービス児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援
この章の根拠(出典)
  • 指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第38条の2(業務継続計画の策定等)放課後等デイサービスは第71条、保育所等訪問支援は第79条で準用

    指定児童発達支援事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定児童発達支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。/2 指定児童発達支援事業者は、従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。/3 指定児童発達支援事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
  • 令和6年度報酬改定等に関するQ&A VOL.1(共通)問14PDF

    感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合や、当該業務継続計画に従い必要な措置が講じられていない場合に減算の対象となる。/なお、(略)業務継続計画の周知、研修、訓練及び定期的な業務継続計画の見直しの実施の有無は、業務継続計画未策定減算の算定要件ではないが、その趣旨を鑑み、これらの業務継続計画の周知等の取組についても適切に実施していただきたい。
  • 指定通所支援の基準についての通知(解釈通知)業務継続計画に係る研修・訓練はいずれも年1回以上。加えて新規採用時の研修が望ましい。訓練は机上・実地を適切に組み合わせる

  • 障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度)業務継続計画未策定減算の減算割合。通所系は1%、障害児入所支援は3%

BCP未策定減算にならない状態かを、自分で点検する

ここで並べるのは、何を書くべきかではなく、すでにある計画が減算にならない状態かどうかを確かめるための点検項目です。感染症編と災害編で1枚ずつ。どちらも前半が減算の算定要件(計画があるか、中身が2つそろっているか、計画に従って必要な措置を講じているか)で、後半の4つが運営基準上の義務にあたります。

感染症編の点検

自己点検

感染症の発生時に備えた業務継続計画

□ 感染症の発生時を想定した業務継続計画が、文書として存在する(災害編と1冊にまとめている場合は、感染症の部分だけを取り出して読めるか)

□ その計画に、支援の提供を継続的に実施するための内容と、非常時の体制で早期の業務再開を図るための内容の両方が入っている(第38条の2第1項が求めているのはこの2つ)

□ 計画に従って必要な措置を講じている。計画に書いた備蓄・体制・連絡手段が、書いたとおりに用意されている

□ 従業者に周知した日と方法が記録に残っている

□ 直近1年以内に、感染症の業務継続計画についての研修を実施した

□ 直近1年以内に、感染症の業務継続計画についての訓練を実施した

□ 計画に見直しの年月日が入っていて、直近の見直しから1年以上空いていない

下の4つは減算の算定要件ではありません。ただし第38条の2第2項・第3項の義務なので、運営指導では別に問われます。

災害編の点検

自己点検

非常災害の発生時に備えた業務継続計画

□ 非常災害の発生時を想定した業務継続計画が、文書として存在する。感染症編しか無い状態は減算の対象

□ 感染症編の中に災害の記述が数行あるだけ、あるいは別の計画を参照と1行書いてあるだけ、という状態になっていない

□ その計画に、支援を継続的に実施するための内容と、早期の業務再開を図るための内容の両方が入っている

□ 計画に従って必要な措置を講じている。安否確認の連絡先や参集の体制が、現在の職員・利用児の名簿と合っている

□ 従業者に周知した日と方法が記録に残っている

□ 直近1年以内に、災害の業務継続計画についての研修を実施した

□ 直近1年以内に、災害の業務継続計画についての訓練を実施した。前回が机上なら、今回は実地を検討した

□ 計画に見直しの年月日が入っている

災害編も、下の4つは減算の算定要件ではありません。上の4つ(計画があるか、感染症編の中に埋もれていないか、2つの内容が入っているか、必要な措置を講じているか)が減算を分けるところです。

研修・訓練の記録の書き方

実施したかどうかは、記録でしか示せません。いつ・誰が・何を・どう実施したかの4点が読み取れる形で残してください。そのまま書き写せる文例を置きます。

文例

研修の記録

実施日時:2026年5月14日(木)17:30〜18:30

種別:業務継続計画(感染症編)に関する研修

実施者:管理者 〇〇

出席者:常勤職員5名、非常勤職員3名(欠席1名は6月2日に個別実施。記録は別紙)

実施方法:事業所内で集合実施。業務継続計画 第3章(発生時の対応)を読み合わせ、感染が判明した場合の連絡順序と、支援を縮小する場合の判断者を確認した

使用資料:業務継続計画(感染症編)2026年4月改訂版、連絡系統図

所感・次回に向けて:判断者が不在の時間帯の代行者が計画に書かれていない。7月の見直しで追記する

文例

訓練の記録(机上)

実施日時:2026年9月10日(木)15:00〜15:45

種別:業務継続計画(災害編)に関する訓練(机上)

実施者:児童発達支援管理責任者 〇〇

出席者:常勤職員5名、非常勤職員2名

想定:平日の活動時間中に地震が発生し、送迎車2台が外出中である状況

実施内容:利用児の安否確認と保護者への連絡の順序を、名簿と連絡系統図を使って机上で確認。送迎車との連絡手段を声に出して確認した

振り返り:連絡先が旧のままの利用児が2名。9月11日に名簿を更新した

次回:2027年2月に実地訓練として、避難経路の移動を行う

訓練は机上と実地を適切に組み合わせることが求められています。片方だけを繰り返さないよう、前回どちらを実施したかと次回の予定を記録の末尾に残しておくと、組み合わせている事実をそのまま示せます。

この減算を防ぐために管理し続けるものは、多くありません。感染症編と災害編の2つの計画、年1回以上の研修と訓練、そして見直しの日付。ただし年に1回だけ回ってくる仕事は、担当者が替わった年に落ちます。次にやる月と担当者を、計画の表紙か年間予定表に書いておくこと。それだけで事故はかなり減ります。

年1回の研修・訓練の記録を、探さずに出せる状態にしておく。

BCP未策定減算で間違えやすい点

注意

BCP未策定減算は、運営指導で発見された月からではなく、遡って適用される

共通Q&A VOL.1 問15は、行政機関が運営指導等で不適切な取り扱いを発見した時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点まで遡及して減算を適用する、としています。

災害編の業務継続計画が2年前から無かったのであれば、指摘を受けた月から直せば済む話にはなりません。未策定だった期間まで戻って計算されます。1%という率の小ささに対して、実害がいちばん大きく出るのがここです。

今この記事を読んで片方しか無いと気づいたなら、いつから無い状態なのかを先に確認してください。策定日を入れて今日から直すことと、遡及分の扱いは別の話です。

4月から11月までの月を横に並べた時系列。5月に災害編の業務継続計画が無い状態になり、10月の運営指導で発見された場合、減算は発見された10月からではなく基準を満たさない事実が生じた5月まで遡り、その翌月の6月分から解消した月まで利用者全員の基本報酬に所定単位数の1%減がかかることを矢印で示している
遡るのは、発見された月ではなく基準を満たさない事実が生じた時点です(共通Q&A VOL.1 問15)。

業務継続計画のまとめ方

ありがちな対応

感染症と災害を1冊の業務継続計画にまとめた。災害の部分には、非常災害対策計画を参照、と1行だけ書いてある。

共通Q&A VOL.1 問14は、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合に減算の対象となるとしています。参照の1行では、災害時に支援を継続し早期に業務を再開するための計画が存在するとは言えません。

こうしておく

1冊にまとめたうえで、感染症編と災害編を章として分け、それぞれに支援継続の体制と業務再開の手順を書いた。

冊数は問われていません。問われるのは、感染症と災害のそれぞれについて第38条の2第1項が求める中身があるかどうかです。

業務継続計画の研修を実施できなかった年の扱い

ありがちな思い違い

前年度は業務継続計画の研修も訓練も実施できなかった。減算対象だと考え、過去分の自主返還を自治体に相談した。

周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は、BCP未策定減算の算定要件ではありません(共通Q&A VOL.1 問14)。計画が策定され、それに従い必要な措置が講じられていれば、研修の未実施だけを理由にこの減算が生じるものではありません。

実際の扱い

計画が策定済みであることを確認したうえで、研修と訓練の未実施は第38条の2第2項の不履行として、実施時期を決めて改善した。

減算の話と運営基準上の義務の話を分けて扱えています。義務であること自体は変わらないため、実施しないままにはできません。

業務継続計画の見直し

ありがちな対応

3年前に策定した業務継続計画をそのまま保管している。職員体制も緊急連絡先も当時のまま。

第38条の2第3項は定期的な見直しを求めています。加えて、連絡先が古いままの計画では、第1項の計画に従い必要な措置を講じている状態と言えるかどうかが問われます。

こうしておく

年1回、研修の前に計画を読み合わせ、変わった箇所をその場で直して改訂日を入れた。

見直した事実が日付で残ります。研修と見直しを同じ機会にまとめると、年1回の実施が定着しやすくなります。

よくある質問

Q.

BCP未策定減算の減算率は3%ではないのですか。

A.

児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援は1%です。3%は障害児入所支援の率で、通所系の解説記事にそのまま転記されていることがあります。減算は各種加算を足す前の基本報酬に対して、利用者全員分かかります。

Q.

感染症用と災害用で、計画は2冊必要ですか。

A.

冊数は問われていません。1冊にまとめても構いません。問われるのは中身で、感染症の発生時と非常災害の発生時のそれぞれについて、支援を継続的に実施するための計画と早期の業務再開を図るための計画があるかどうかです。片方が欠ければ減算の対象になります。

Q.

研修や訓練を実施していないと減算になりますか。

A.

なりません。共通Q&A VOL.1 問14は、業務継続計画の周知、研修、訓練及び定期的な見直しの実施の有無は算定要件ではない、と明記しています。ただし指定通所基準 第38条の2 第2項・第3項の義務であることに変わりはなく、解釈通知上は研修・訓練とも年1回以上、加えて新規採用時の研修が望ましいとされています。

Q.

運営指導で未策定を指摘されました。いつから減算されますか。

A.

発見された時点からではありません。共通Q&A VOL.1 問15により、基準を満たさない事実が生じた時点まで遡及して適用されます。いつから未策定の状態だったのかを先に確認してください。

Q.

他の減算と重なったら、大きいほうだけが適用されるのですか。

A.

いいえ。複数の減算事由に該当する場合は、それぞれの減算割合を乗じます(留意事項通知(13))。1%減の減算には虐待防止措置未実施減算と身体拘束廃止未実施減算もあり、3つ重なればすべてが基本報酬に掛かります。

Q.

保育所等訪問支援も対象ですか。

A.

対象です。第38条の2 は第79条で準用されており、求められる中身は児童発達支援・放課後等デイサービスと同じです。支援プログラム未公表減算のように訪問支援が対象外になる減算とは扱いが異なります。

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この記事が参考にした資料(一次資料)

執筆:OHANA AI 編集部(株式会社Cocowa)

最終更新

本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。様式や運用の細部は自治体によって異なる場合があります。最終的な取扱いは、指定を受けている自治体の通知および窓口の指示をご確認ください。

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