運営指導公開日

虐待防止措置未実施減算|委員会・研修・担当者の3つで1%減

虐待防止委員会は年に一度開いている。研修も済ませた。指針もある。それでも運営指導で虐待防止措置未実施減算を指摘されることがあります。抜けているのは、たいてい虐待防止担当者の配置。逆に、多くの事業所が必須だと思い込んでいる指針の作成は、この減算の要件に入っていません。

この記事では、留意事項通知が挙げる3つの要件を先に示し、虐待防止委員会の開催負担を下げる3つの方法と、運営指導で開催の証拠として出せる議事録の文例までをまとめます。

虐待防止措置未実施減算を止める3つの要件

虐待防止措置未実施減算は、留意事項通知が挙げる3つの状態のいずれかに当たると適用されます。3つそろって初めて要件を満たすのではなく、1つでも欠ければ減算という作りです。

  1. 虐待防止委員会を定期的に開催していない(1年に1回以上開催していない)
  2. 虐待の防止のための研修を定期的に実施していない(1年に1回以上実施していない)
  3. 虐待防止措置を適切に実施するための担当者を配置していない
注意

虐待防止のための指針の作成は、この減算の要件ではない

虐待防止のための指針の作成は望ましいとされるにとどまり、減算の要件には入っていません。指針が無いことだけを理由にこの減算が付くことはありません。

ただし、指針の整備が減算要件に入る減算が別にあります。身体拘束廃止未実施減算です。2つを同じチェックリストで管理していると、この違いで取り違えます。

虐待防止措置未実施減算の3要件を並べた図。要件①は虐待防止委員会を1年に1回以上開催、要件②は虐待の防止のための研修を1年に1回以上実施、要件③は虐待防止措置を適切に実施するための担当者を配置。3つのうち1つでも欠けると利用者全員の基本報酬が1%減。下部は身体拘束廃止未実施減算との対比表で、委員会の開催と研修の実施はどちらも減算要件、担当者の配置は虐待防止側だけが減算要件、指針の整備は虐待防止側が減算要件ではなく身体拘束側が減算要件、身体拘束等に係る記録は虐待防止側は対象外、減算率は通所系でどちらも1%減で、障害児入所支援が10%になるのは身体拘束側
上が3つの要件。下の表で色が付いている行が、虐待防止側と身体拘束側で扱いが逆になる「指針の整備」です。

減算率は利用者全員について1%。対象は児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援のいずれもです。率は小さく見えますが、解消するまで毎月続き、他の減算と重なればそれぞれの減算割合が乗じられます。減算全体の中での位置づけは減算一覧と減算率で確認できます。

根拠と、身体拘束廃止未実施減算との違い

3つの要件は留意事項通知(10)③に列挙されています。虐待防止委員会の開催も研修の実施も、頻度は1年に1回以上。

虐待防止措置未実施減算と身体拘束廃止未実施減算の要件の違い

項目虐待防止措置未実施減算身体拘束廃止未実施減算
委員会の1年に1回以上の開催減算要件減算要件
研修の1年に1回以上の実施減算要件減算要件
担当者の配置減算要件減算要件ではない(解釈通知が専任の担当者を決めることを求める)
指針の整備減算要件ではない(作成は望ましいにとどまる)減算要件
身体拘束等に係る記録対象外減算要件(拘束の有無ではなく記録の有無で判定)
減算率通所系は1%減通所系は1%減(障害児入所支援は10%)

虐待防止委員会の構成は、基準解釈通知が具体的に書いています。専任の虐待防止担当者は必置。そのうえで、利用者やその家族、専門的な知見のある外部の第三者等も構成員に加えるよう努めることとされています。開催に必要な人数は、管理者か虐待防止担当者が参画していれば最低人数を問われません。少人数の事業所でも、頭数が集まらないことは開催しない理由になりません。

検討結果を従業者に周知徹底することも必要です。開いて終わりにせず、周知までを1回分の記録に含めてください。虐待防止委員会における対応状況は、適切に記録の上、5年間保存します。

虐待防止措置未実施減算の適用と、事実が生じたあとの手続

項目内容
減算率所定単位数(各種加算前の基本報酬)の1%減
適用する単位利用者全員
起算基準を満たさない事実が生じた月の翌月から
終期改善が認められた月まで
改善計画事実が生じたら速やかに改善計画を都道府県知事等へ提出する
改善状況の報告事実が生じた月から3月後に改善状況を報告する
新規指定時の扱い担当者の配置は指定と同時。虐待防止委員会の開催と研修の実施は指定後速やかに
補足

新規開設なら、虐待防止担当者の配置だけは指定日に間に合わせる

開設準備で虐待防止委員会と研修まで手が回らなくても、担当者を決めて記録に残すことは指定日までに終えられます(共通Q&A VOL.1 問84)。

この章の根拠(出典)
  • 費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について(留意事項通知)(10)③PDF

    (一) (略)虐待防止委員会を定期的に開催していない場合。具体的には、1年に1回以上開催していない場合とする。/(二) 虐待の防止のための研修を定期的に実施していない場合。具体的には、研修を1年に1回以上実施していない場合とする。/(三) 虐待防止措置(虐待防止委員会の開催及び虐待の防止のための研修の実施)を適切に実施するための担当者を配置していない場合。
  • 同 (10)③(一) なお書き(法人単位・一体的運営・テレビ電話装置等)PDF

    なお、当該委員会については、事業所単位でなく、法人単位で設置・開催することを可能としている。また、(略)身体拘束適正化検討委員会と一体的に設置・運営すること(虐待防止委員会において、身体拘束等の適正化について検討する場合も含む。)をもって、当該委員会を開催しているとみなして差し支えない。また、委員会はテレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。
  • 指定通所支援の基準についての通知(基準解釈通知)第三の(35)PDF

    虐待防止委員会の設置に向けては、構成員の責務及び役割分担を明確にするとともに、専任の虐待防止担当者(必置)を決めておくことが必要であり、虐待防止委員会の構成員には、利用者やその家族、専門的な知見のある外部の第三者等も加えるよう努めることとする。虐待防止委員会の開催に必要となる人数については事業所の管理者や虐待防止担当者(必置)が参画していれば最低人数は問わないが、委員会での検討結果を従業者に周知徹底することが必要である。なお、虐待防止委員会における対応状況については、適切に記録の上、5年間保存すること。
  • 令和6年度報酬改定等に関するQ&A VOL.1(共通)問84PDF 新規に指定を受ける事業所について、担当者の配置は指定と同時、虐待防止委員会の開催と虐待の防止のための研修の実施は指定後速やかに行うものとしている

負担を増やさずに虐待防止委員会の要件を満たす

要件は3つだけ、と分かっても、事業所が複数あれば日程調整が重くなります。留意事項通知(10)③(一)のなお書きには、その負担を下げる方法が3つ明記されています。読み飛ばされやすい箇所です。

  • 法人単位で設置・開催してよい — 事業所単位でなく、法人単位で設置・開催することが可能とされています。系列の事業所ごとに別々の委員会を持つ必要はありません。
  • 身体拘束適正化検討委員会と一体的に設置・運営してよい — 一体的な設置・運営をもって虐待防止委員会を開催しているとみなして差し支えない、とされています。虐待防止委員会の中で身体拘束等の適正化を検討する形も含みます。
  • テレビ電話装置等を活用してよい — 委員会はテレビ電話装置等を活用して行えます。遠方の系列事業所や外部の第三者も、移動なしで参加できます。

3つを重ねると、法人全体で年1回、オンラインを併用して虐待防止と身体拘束等の適正化を一度に検討する形に収まります。それでも両方の委員会を開催したものとして扱われます。ただし研修は別の要件。委員会を一体開催しても、虐待の防止のための研修を1年に1回以上実施する義務は消えません。

虐待防止委員会の議事録の文例(単独で開催した場合)

運営指導で問われるのは、開催を示せるかどうかです。開催日・出席者・検討事項・従業者への周知方法・次回予定の5点がそろえば、1枚で足ります。

文例

虐待防止委員会 議事録

1. 開催日時/2026年5月14日(木)17:30〜18:20

2. 開催方法/〇〇事業所 会議室(法人本部の1名はテレビ電話装置等により参加)

3. 出席者/管理者 〇〇(委員長)、虐待防止担当者 〇〇(専任)、児童発達支援管理責任者 〇〇、児童指導員 〇〇、法人本部 〇〇 ※欠席なし

4. 検討事項/(1) 前年度の虐待の防止のための研修の実施結果と理解度の確認 (2) ヒヤリハット報告3件の検討(いずれも送迎時の言葉かけに関するもの) (3) 本年度の虐待の防止のための研修の年間計画(実施日・対象者・内容) (4) 虐待防止のための指針の見直しの要否

5. 決定事項/(1) 送迎時の声かけの言い換え例を次回の全体会議で配布する (2) 本年度の虐待の防止のための研修は2026年9月10日に実施し、新規採用者には採用時に個別実施 (3) 指針は変更なし

6. 従業者への周知方法/2026年5月18日の全体会議で本議事録を読み合わせ。欠席した2名には同月中に個別に説明し、周知確認欄に署名を得た

7. 次回開催予定/2027年5月(1年に1回以上の開催を維持する)

記録者/〇〇 保存期間/5年間

虐待防止委員会の議事録の様式に文例を記入したイメージ。開催日時、開催方法、出席者、検討事項、決定事項、従業者への周知方法、次回開催予定、記録者と保存期間の欄が上から並び、出席者の欄の虐待防止担当者に「配置が減算要件」と注記がある。下部には点線の枠で、身体拘束適正化検討委員会と一体開催した場合に足す「5-B 身体拘束等の適正化に関する検討事項」の欄が示されている
実線の欄が単独開催のときの議事録。一体開催なら、点線の欄をそのまま足せば1枚で両方の委員会の開催を示せます。

身体拘束適正化検討委員会と一体開催した場合の議事録

一体開催のときに起きやすい事故が、議事録が虐待防止の話だけで終わっていて、身体拘束等の適正化を検討した形跡が残らないことです。検討事項を2つに割って書くと、1枚で両方の委員会の開催を示せます。

文例

虐待防止委員会(身体拘束適正化検討委員会と一体開催) 議事録

1. 開催日時/2026年5月14日(木)17:30〜18:40

2. 会議の位置づけ/本委員会は、虐待防止委員会と身体拘束適正化検討委員会を一体的に設置・運営するものとして開催した(留意事項通知(10)③(一))。法人単位で設置し、〇〇事業所・〇〇事業所の2事業所を対象とする

3. 開催方法/法人本部 会議室。〇〇事業所の2名はテレビ電話装置等により参加

4. 出席者/管理者 〇〇(委員長)、虐待防止担当者 〇〇(専任)、身体拘束等の適正化対応策を担当する者 〇〇(専任)、児童発達支援管理責任者 〇〇、児童指導員 〇〇、看護職員 〇〇(専門的な知見のある者として出席)

5-A. 虐待防止に関する検討事項/(1) 前年度の虐待の防止のための研修の実施結果 (2) ヒヤリハット報告の検討 (3) 本年度の研修年間計画

5-B. 身体拘束等の適正化に関する検討事項/(1) 前年度の身体拘束等の実施件数と記録の確認(実施0件。記録様式の運用も確認) (2) 身体拘束等の適正化のための指針の見直し(変更なし) (3) 身体拘束等の適正化のための研修の実施結果と本年度の計画

6. 決定事項/5-A・5-Bそれぞれについて記載する 7. 従業者への周知方法/2026年5月18日・19日の各事業所の全体会議で本議事録を読み合わせ。欠席者には個別に説明し、周知確認欄に署名を得た

8. 次回開催予定/2027年5月(虐待防止委員会・身体拘束適正化検討委員会とも1年に1回以上の開催を維持する)

記録者/〇〇 保存期間/5年間

ポイント

一体開催の議事録で外せない3点

・冒頭に、2つの委員会を一体的に設置・運営するものとして開催した旨を書く。書いていないと、身体拘束適正化検討委員会は別に開くべきものと読まれます。

・専任の虐待防止担当者と、身体拘束等の適正化対応策を担当する者の両方を出席者に書く。虐待防止担当者の配置は減算要件そのものです。

・身体拘束側の検討事項に、身体拘束等の適正化のための指針の見直しを必ず入れる。指針の整備は身体拘束廃止未実施減算の減算要件で、虐待防止側とは扱いが違います。

年1回の開催と研修の期限は、記録を残す仕組み側で管理できます。

虐待防止措置未実施減算で間違えやすい点

虐待防止担当者

ありがちな対応

虐待防止委員会は年1回開いている。担当者は特に決めず、管理者が実質的に回している。

担当者を配置していないこと自体が減算要件の3つ目です。専任の虐待防止担当者は必置とされており、委員会と研修を開いていても、配置がなければ減算の対象になり得ます。

こうしておく

専任の虐待防止担当者を1名決め、辞令と委員会の議事録の出席者欄に氏名と役割を残した。

配置した事実を運営指導で示せます。誰が虐待防止担当者なのかを、記録から特定できる状態にしておきます。

虐待防止のための指針

ありがちな思い違い

虐待防止のための指針が未整備だったので、虐待防止措置未実施減算の対象になると考えて自主返還の準備を始めた。

虐待防止のための指針の作成は望ましいにとどまり、この減算の要件ではありません。要件は委員会・研修・担当者の3つ。

実際の扱い

3つの要件を満たしているかを先に確認し、あわせて身体拘束等の適正化のための指針の有無を点検した。

指針の整備が減算要件になるのは身体拘束廃止未実施減算のほうです。点検すべき対象を取り違えずに済みます。

虐待防止委員会の開催間隔

ありがちな思い違い

2025年3月に開催し、次は2026年6月に開催した。年度ごとに1回ずつなので要件は満たしていると考えた。

要件は1年に1回以上の開催です。年度内に1回あることではなく、開催の間隔で見ます。この例では15か月空いています。

実際の扱い

前回開催日から12か月以内に次回を置き、議事録の末尾に次回開催予定を書いて日程を固定した。

次回予定を議事録に残しておくと、担当者が交代しても間隔が空きません。

注意

改善計画の提出と、3月後の改善状況の報告

基準を満たさない事実が生じた場合は、速やかに改善計画を都道府県知事等へ提出します。そのうえで、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告します。

減算は事実が生じた月の翌月から、改善が認められる月まで、利用者全員について1%。届出を出して終わりにせず、3月後の報告までが一連の手続です。

よくある質問

Q.

虐待防止のための指針が無いと、虐待防止措置未実施減算になりますか。

A.

なりません。虐待防止のための指針の作成は望ましいとされるにとどまり、減算要件は虐待防止委員会の1年に1回以上の開催、虐待の防止のための研修の1年に1回以上の実施、虐待防止措置を適切に実施するための担当者の配置の3つです。ただし身体拘束廃止未実施減算では、身体拘束等の適正化のための指針の整備が減算要件に入っています。

Q.

虐待防止委員会は事業所ごとに開かないといけませんか。

A.

事業所単位でなく、法人単位で設置・開催することが可能とされています。法人で1つの委員会を持ち、系列の事業所の担当者が参加する形で構いません。委員会はテレビ電話装置等を活用して行うこともできます。

Q.

身体拘束適正化検討委員会と一緒に開いてもよいですか。

A.

構いません。身体拘束適正化検討委員会と一体的に設置・運営することをもって、虐待防止委員会を開催しているとみなして差し支えないとされています。虐待防止委員会の中で身体拘束等の適正化について検討する場合も含まれます。議事録では、虐待防止に関する検討事項と身体拘束等の適正化に関する検討事項を分けて残してください。

Q.

委員会に何人集めればよいですか。

A.

最低人数は問われません。基準解釈通知は、事業所の管理者か虐待防止担当者が参画していれば最低人数は問わないとしています。そのうえで、利用者やその家族、専門的な知見のある外部の第三者等も構成員に加えるよう努めることとされています。

Q.

議事録はいつまで保存しますか。

A.

虐待防止委員会における対応状況については、適切に記録の上、5年間保存することとされています。開催の記録だけでなく、検討結果を従業者へ周知した方法まで残しておくと、運営指導で開催の事実を説明しやすくなります。

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この記事が参考にした資料(一次資料)

執筆:OHANA AI 編集部(株式会社Cocowa)

最終更新

本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。様式や運用の細部は自治体によって異なる場合があります。最終的な取扱いは、指定を受けている自治体の通知および窓口の指示をご確認ください。

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